書籍「仏事・仏壇がよくわかる」を全編公開

第4章(2) 仏壇・仏具の手入れの仕方

【4】仏壇・仏具の手入れの仕方

1.仏壇の手入れ

仏壇や仏具はつねにきれいにしておきましょう。仏壇の掃除は毛バタキでほこりを払ったり、やわらかい布や仏壇用クロスで拭き取ります。市販の化学ぞうきんはなるべく使わないほうがよいでしょう。仏壇の表面の艶にムラが出やすくなります。
汚れが落ちにくい場合は、ぬるま湯などにひたしたやわらかい布を固く絞り、拭きます。仏壇に湿気は大敵ですので、水気を残さないようにしっかりと乾拭きをします。
仏壇に水をこぼした場合には、乾いた布ですばやくふき取ります。こぼれた水をそのままにしておくと、仏壇本体や塗装などに変化を起こすことがあります。また、花立を置くとき、水を取り替えたとき、底に水滴が残っていないように、きちんと拭いてから、置くようにしましょう。
仏壇の隅や内障子のほこり、彫刻の隙間のほこりは、毛バタキやハケで払い落とします。
金箔の部分は、直接手で触れないようにします。指紋のあとがついたり、手の汗や脂がついてしまいます。傷がつきやすいので、布で拭かないようにし、毛バタキでほこりを払います。毛バタキの芯で、金箔部分を傷つけないように注意しましょう。
仏壇の取り扱いもていねいに行います。良い仏壇は丈夫にできていますが、膳引きや引き出しに手をついて、立ち上がるようなことは避けましょう。何度もやっているうちに壊れることがあります。
長年使っていると、仏壇の扉の蝶番のネジがゆるんできます。そのままにしておくと、仏壇を傷つけることがあるので、しっかりと締め直しましょう。

2.本尊や位牌の手入れ

本尊や位牌は、毛バタキでほこりを払います。金箔や金粉の部分は、手で触れたり布で拭かないようにします。

3.仏具の手入れ

仏具は種類が多く、素材もそれぞれに違います。素材にあった手入れをするとともに、ていねいに扱い、仏具を落として仏壇を傷つけることがないようにしましょう。
塗り仏具はやわらかい布で乾拭きして、汚れを取ります。かたい布で拭くと、傷がつく可能性があるので、気をつけましょう。
金物仏具で磨くことができるものは、金属磨き剤や洗浄液を使って、よく磨き光沢を出します。
金物仏具で色付きのものは、やわらかい布で拭き取ります。かたい布や磨き剤でこすると、色が取れてしまうので、注意しましょう。
燭台にロウソクのロウがたまったときは、ロウ除去液を使って取ります。釘などで取ろうとすると、燭台を傷つけることがあるので、気をつけましょう。
香炉の灰の手入れもしましょう。線香の燃えカスなどで灰が汚れているときは、灰ふるいを使って灰の手入れをすると、灰がふわふわに生まれ変わります。灰をふるいにかけたあと、灰の表面は、灰ならしできれいにします。

4.念入りな掃除をする日を決める

普段、仏壇や仏具の掃除をしていても、目の届かないところが汚れているものです。1年に3~4回、お盆や彼岸の前、年末など各家庭で掃除をしやすい日を決めて念入りな掃除をするとよいでしょう。
そのとき、仏壇に傷がついていないか、壊れているところがないかをチェックすることも忘れないでください。修理が必要と感じたら、仏壇店に早めに相談するとよいでしょう。

【5】仏壇の修理「お洗濯」

どんなものでも使いつづけていると、傷んできます。仏壇も例外ではありません。仏壇の内部がロウソクや線香の煙で黒ずんだり、金箔や漆塗りがはがれてきます。扉がガタガタになったり、障子が破れていることもあります。そのまま放置せずに、なるべく早めに修理することが大切です。簡単だから、と自分で修理をすると、かえって傷を大きくしてしまいがちなので、まず、購入した仏壇店に相談しましょう。出張修理でなおるものなのか、預ける必要がある修理なのかがわかります。

仏壇の全体を修理することを「お洗濯」といいます。お洗濯が必要、といわれたら、必ず、事前に修復費用の見積もりを出してもらいましょう。
金仏壇の場合は、仏壇の購入価格の5割程度かかります。期間も3ヶ月ほどかかります。
お洗濯では、金仏壇を解体して汚れを洗浄し、壊れた部分やキズを補修し、金箔を押しなおしたり、漆を塗りなおして新品同様に仕上げてくれます。
唐木仏壇も全体を修理すると、きれいに生まれ変わります。

仏壇店はお客様に仏壇を購入していただいてからが、お客様との関係がはじまる商売と筆者は考えています。仏壇は購入したあとも、メンテナンスや修理などで仏壇店との関係はつづいていきます。仏壇店は仏壇のパートナーのようなもので、お客様と仏壇店は長い付き合いとなるのです。だからこそ、仏壇を購入するとき、アフターサービスの良い仏壇店を選ぶことが大切なのです。

「金仏壇のお洗濯」

漆塗りの金仏壇は日本の伝統工芸品で、職人の技術の粋を集めてつくられています。金仏壇には、木地師、塗師、金箔押師、宮殿師、彫刻師、蒔絵師、飾り金具師の通称「七職」と呼ばれる職人集団がかかわっています。
どの工程も手間をかけてつくられた良い仏壇は、修復することを想定してつくられているので、分解して修理できます。100年経った仏壇でも、新品同様の美しい輝きが取り戻せるのです。

その工程を簡単に説明すると、

(1)仏壇の外扉、内障子、彫刻などをはずしたあと、くさび留めや打ち付けてある飾り金具などをとりはずして分解。

(2)仏壇にこびりついた汚れを洗浄液で洗い落とします。表面に塗ってある漆や金箔をすべてはがし落とし、飾り金具は色付けやメッキをし直します。

(3)木地や彫刻の傷んでいる部分を補修し、金具が打ち付けてあった釘穴を埋めます。反りや傷みがはげしい部品は、つくり直して交換します。

(4)洗ったあと十分に乾燥させた部品を表面が均一になるまで研磨し、漆を繰り返し塗り重ねていき、新品同様の光沢にします。

(5)表面にムラなく均等に本金箔を押していき、手描き蒔絵を施します。

(6)金箔を押し終わったら、飾り金具を打って、元の姿に組み立てて完成です。

修復工程は、新品の仏壇をつくるときと同じ作業工程で行います。

【6】仏壇を処分するとき

お客様から「古い仏壇を処分したいのですが、どうしたらよいのでしょうか」という質問を受けることがあります。最近はひとりっ子が増えていますので、長男・長女の結婚があたりまえになっています。どちらかの家の両親がなくなると、家や家財道具の処分をすることになるのですが、仏壇をどのように処分したらいいのか、と相談されるのです。古い仏壇は粗大ごみに出したりするものではありません。

以前は、古い仏壇は菩提寺で「お焚き上げ」をしてもらうのがほとんどでした。
しかし最近は、防災や環境問題でお焚き上げできないお寺も増えてきました。そのときは仏壇店に依頼して供養処分してもらいます。お焚き上げ供養処分料や引取り料が必要になります。
古い仏壇の引き出しに大切な物が残っていないように注意しましょう。

「仏壇の日」

毎年、3月27日を「仏壇の日」と、全日本宗教用具協同組合が定めています。
これは『日本書紀』の記述にもとづいて決められたものです。『日本書紀』には白鳳14年(686年)3月27日に、天武天皇が「諸國(くにぐに)の家毎に仏舎を作り、即ち仏像と経とを置きて礼拝供養せよ」という詔(みことのり)が出されたとされています。
白鳳14年3月27日から日本では、家ごとに仏壇を安置するようになったとして、この日を「仏壇の日」と定めたのです。

【7】神さまに手を合わせる神棚

1.お神札(ふだ)を祀るもの

日本の家庭では、先祖を仏壇に、神さまを神棚にまつる生活が自然に行われてきました。
一般の家庭に神棚が祀られるようになったのは、江戸時代初期といわれています。「お伊勢まいり」が流行したこのころ、伊勢神宮のお神札(ふだ)を安置する場所として、家庭に神棚が祀られるようになったのです。

神棚を祀る場所は、南向きか東向きになる明るくて清浄な場所がよいとされています。見上げる程度の高さに神棚を設けます。仏壇と同じ部屋にまつる場合は、神棚と仏壇が向かい合わせにならないように安置します。おまいりするとき、お尻を向けないようにするためです。
神棚はヒノキやケヤキの白木からそのままつくられるのが一般的です。注連縄(しめなわ)を張ることもあります。注連縄は内と外を区別し、不浄から神前を隔てる意味があり、注連縄を張る場合は、向かって右に太い方がくるように張ります。
神棚をはじめて祀る時期は、一般に年末が多いようですが、家の新築や商店の開店、事務所開きのときに、新しい神棚を祀ることも多いようです。一家の繁栄、家内安全、商売繁盛、諸願成就を願って、神棚を祀ります。

2.お神札(ふだ)の並べ方

神棚にはお神札を祀って拝礼します。お神札の中心は、神宮大麻(じんぐうたいま)という伊勢の天照皇大神宮のお神札です。お神札を並べて祀る場合は、中央に伊勢の天照皇大神宮のお神札、向かって右に氏神神社のお神札、左に崇敬(すうけい)神社のお神札を祀ります。
お神札を重ねる場合は、一番手前に天照皇大神宮のお神札、その後ろに氏神神社のお神札、その後ろに崇敬神社のお神札を祀ります。

氏神神社とは地域の神社のことで、家や地域の守り神です。崇敬神社とは、個人や会社に係わりが深い神社のことです。
お神札は各神社で毎年、年末に新しくいただき、一年間お祀りした古いお神札は神社に納めます。

「神棚の拝礼の仕方」

神棚にお供えするものを神饌(しんせん)と言い、米、水、塩、酒、榊などをお供えします。「栄える木」という意味の榊は、神事に用いる木のことで、ツバキ科の常緑小高木の枝葉を飾ります。
お供えを終えたら拝礼をします。拝礼の仕方は、2回お辞儀をし、2回柏手を打ち、1回お辞儀をする二拝二拍手一拝が基本です。

書籍「仏事・仏壇がよくわかる」

本記事は書籍「仏事・仏壇がよくわかる」からの転載です。

著:滝田 雅敏