書籍「仏事・仏壇がよくわかる」を全編公開
第1章(2) 四十九日後の法要と営み方
【5】四十九日後の法要と営み方
1.百カ日
百カ日は、亡くなった命日から数えて100日目の法要です。
「卒哭忌(そつこくき)」ともいわれ、泣くことをやめ悲しみに区切りをつける日で、家族や親族などの身内で法要を営むことが多いです。
2.一周忌
故人が亡くなってから一年後の命日が一周忌で、家族や親族のほか、故人と縁の深かった友人や知人を招いて法要を営みます。
法要は命日の当日に行うのが理想ですが、実際には参列者の都合もあり、最近は週末に行うことが多いです。必ず命日より早めの日に行うのが慣わしです。
一周忌までが喪中(もちゅう)で、この日をもって喪(も)が明けることになります。喪中に迎えた正月は、年賀状、年始挨拶、正月飾り、初詣などの正月行事は控えます。
3.年忌法要はいつまでつとめるのか
年忌法要は、年回法要ともいい、一般に法事と呼ばれているものです。
亡くなった翌年が一周忌、その翌年の2年後が三回忌です。三回忌からは亡くなった年も含めて数え、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌と追善供養の法要を営みます。
一周忌と三回忌は四十九日法要に次いで大切な法要です。親族を招いて、規模の大きな法要を営みます。スムーズにできるように、おそくとも2ヶ月前から準備をしましょう。
まず、住職と相談をして、法要を営む日を決めます。法要の日に卒塔婆を立てる場合は、事前に住職に依頼しておきます。次に、法要場所を自宅か、菩提寺、あるいは斎場で行うかを決めます。一般に関東は菩提寺で、関西は自宅で法要を営むことが多いと言われます。法事を菩提寺以外で営む場合は、「御布施」とは別に「御車代」を包むのが一般的です。また住職が会食を辞退された場合は、「御膳料」を包む場合があります。
日取り、場所が決まったら、招待客を決め、1ヶ月前には案内状を送り、返事をもらいます。参列者の人数が確定してから、会食、引き出物を用意します。引き出物は一所帯に一個でよいとされています。表書きに、「志(こころざし)」か「粗供養(そくよう)」、下に施主の家名を書きます。菩提寺へのお礼の表書きは、「御布施」とし、「御経料」とか「御礼」とは書きません。
法事の際の服装は、施主側は略礼服を着用し、数珠を忘れずに持参します。
一周忌と三回忌は必ず、ひとりの法要を営みます。七回忌以降は同じ年に法要が重なった場合、まとめて行ってもよいとされ、法要を行う日は、あとに亡くなった故人の命日にあわせます。案内状には誰と誰の法要かを必ず明記します。これを「併修」あるいは「合斎」といいます。
年忌法要はいつまで行うのか、とよく質問を受けます。三回忌までは、家族や親族のほか、故人と縁の深かった方々を招きますが、七回忌以降は次第に招く人を少数に絞っていく場合が多いです。
年忌法要の回数は、地域の慣習や菩提寺の考えによって異なりますが、一般には三十三回忌か五十回忌をもって、最後の法要の「弔(とむら)い上げ」とすることが多いです。
4.祥月命日とは
祥月命日(しょうつきめいにち)とは、故人が亡くなった月日のことです。たとえば、故人が3月15日に亡くなった場合、毎年3月15日が祥月命日です。
年忌法要に当らない年でも年に一度の命日ですから、この日は家族そろってお墓参りをして、できるだけ仏壇の前に座りたいものです。
5.法事の準備の手順
四十九日や一周忌などの法事を行う当主を施主(せしゅ)といいます。一般には葬儀の喪主(もしゅ)を務めた人が施主をつとめます。
施主は主催者として、次のような手順で準備します。
- (1) 菩提寺の住職と相談して、誰の何回忌の法要かを伝え日時を決める。
- (2) 法要の場所や招待する人数を決める。
- (3) 法要の後の会食(お斎(とき))の場所を決め、案内状を送る。
- (4) 会食(お斎(とき))の料理、席順を決める。
- (5) 引き出物の用意をする。
- (6) お布施やお供え物の用意をする。
6.法要の案内文の書き方
近親者だけですませる法要ならば、電話連絡でもかまいませんが、四十九日法要や一周忌、三回忌の法要など大きな法要を営むときは、ハガキや封書で法要の案内をします。出欠の返事をもらうために、往復ハガキや返信用ハガキを同封して送ります。返信用ハガキの表に返送先の住所、氏名を書き、裏には出欠に丸がつけられるようにしておきます。
案内文は簡潔に必要なことを伝えることが大切です。内容は時候のあいさつ、誰の何回忌か、日時・場所(必要な場合は地図・電話番号を添える)、平服でよい場合はその旨を明記します。
7.法事の当日
法事の当日は、次のようにすすめるのが一般的です。
住職の読経(どきょう)→参列者による焼香(しょうこう)→住職の法話→墓参り→施主の挨拶→会食とつづきます。
焼香の順番は、施主が一番初めに焼香し、その後、故人と関係の深かった順に行います。
法事の構成を大きく分けると、住職の読経による法要と、その後の会食に分けられます。
このような法要の後の会食のことを、「お斎(とき)」といい、住職が出席した場合は正客(しょうきゃく)となります。
法要は、お寺や自宅、霊園で営まれ、引き続き同じ場所で会食に移る場合と、ホテルや料理屋などへ場所を移動して会食する場合とがあります。
また法要は家族や親族だけで行い、その他の故人と縁の深かった友人や知人は、直接会食の会場に来ていただく場合もあります。その場合、故人の遺影を飾った献花台に献花をして頂いたりします。
会食を始めるとき、施主は参列者に挨拶をし、終了のときも施主が挨拶をします。住職や縁の深かった友人から挨拶を頂いたり、「献杯(けんぱい)」の発声がされることもあります。
8.法事での挨拶
法要のあとの会食をはじめるとき、施主は参列者にお礼の挨拶をします。終わりに、もう一度施主が終了の挨拶をするのが一般的です。
9.焼香の仕方
普段のおまいりには線香を使いますが、法要のときには焼香をつかいます。
焼香には、焼香台へ進み出て行う場合と、自分の席で行う「回し焼香」の二通りがあります。
宗派により線香の本数やあげ方、焼香の仕方が違います。一般的作法として、順番が来たら、施主に一礼して焼香台の前に進み、本尊、遺影、位牌を仰ぎ合掌礼拝します。右手で香をつまんで額のところまで押しいただきます。(浄土真宗では押しいただきません)香炉に静かにくべ、数珠を手に合掌礼拝します。最後に施主に一礼して席に戻ります。
宗派 | 線香の数 | 焼香の回数 |
---|---|---|
天台宗 | 3本を立てる | 3回 |
真言宗 | 3本を立てる | 3回 |
浄土宗 | 1本立てる | 1回 |
浄土真宗本願寺派 | 折って寝かせる | 1回 |
真宗大谷派 | 折って寝かせる | 2回 |
曹洞宗 | 1本を立てる | 2回 |
臨済宗 | 1本を立てる | 1回 |
日蓮宗 | 1本を立てる | 1回 |
10.法事にかかる費用
法事にかかる費用は、法事の規模によって異なりますが、あらかじめ目安を立てておいたほうがよいでしょう。
- (1) 会場費・会食費(お斎(とき)の飲食代)
- (2) お布施(住職への謝礼)
- (3) 引き出物
- (4) その他(案内状の印刷代、送迎の車代)
11.法事に招かれた時
法事の案内状を受け取ったら、すみやかに返事を出しましょう。事情の許すかぎり出席したいものです。故人を偲ぶとともに、仏法にめぐり合う絶好の機会です。また、親類、友人らが一同に集い、旧交を温め合うよい機会でもあります。
法事に招かれたときの服装は葬儀のような厳格なものではありません。男性の場合は、略礼服、紺やグレーの地味なスーツでよいでしょう。三回忌までの法事ならば、略礼服の着用が無難だといえます。女性の場合は、黒やグレーの地味なスーツ、ワンピースでよいでしょう。
案内状に「平服で」とあっても、あまり派手な服装や、カジュアルな服装は避けましょう。
12.法事に招かれた時に持参するもの
当日、持参するものとして忘れてならないものは数珠です。仏事では欠かせないものです。
もうひとつ忘れてならないものは、供物ないし供物料です。最近では供物料として現金を包むのがふつうです。
現金は不祝儀袋に入れ、年忌法要のときは「御佛前」、四十九日までは「御霊前」と表書きします。
線香など供物を持参する場合の、のし紙の表書きは、四十九日までは「御霊前」、四十九日後は「御佛前」と表書きします。また四十九日の前後関係なく「御供」としてもよいです。
13.法事に招かれた時の心構え
法事の開始時間に遅れないことが大切です。20~30分のゆとりを持って会場に着くようにしましょう。葬儀ではないからと、法事の際、大声で笑ったり騒ぐことはつつしみ、静かに故人の供養につとめたいものです。
また法事の途中で帰るのは避けましょう。
「数珠」
数珠は葬式や墓参り、法事など仏教行事には欠かせません。必ず、一人に一つは持つものです。
数珠はお釈迦さまがつくられた、と「木?子(もくけんし)経』のなかに書かれているそうです。それによると、インドのハルリ国の王がお釈迦さまに「私の国では盗賊が絶えず出没し、国中に疫病が流行り、人々が苦しんでいます。この苦しみからお救いください」とお願いしたところ、お釈迦さまはモクケンシの実百八個を通して輪をつくり、「心から念仏を唱え、ひとつずつ操っていきなさい」と説かれたそうです。これが数珠のはじまりです。
数珠の玉の数は人間の煩悩(ぼんのう)をあらわす百八個が基本となっています。常に携帯して手を合わせれば、煩悩が消え、功徳(くどく)を得るといわれています。
正式な数珠は宗派によって、数珠の形が違っています。一般には各宗派共通で使える略式の数珠が使われています。略式の数珠は、18~43個くらいの珠で作られていて、数に決まりはありません。
珠の素材に宗派による違いはないので、好きなものを選んでいいでしょう。尊いといわれているのが菩提樹(ぼだいじゅ)の実です。お釈迦さまが悟りを開かれたという場所にあった木が菩提樹だからです。木の実は年が経てば経つほど、つやを増してきます。紫檀(したん)や黒檀(こくたん)、鉄刀木(たがやさん)などの銘木の数珠もあります。
宝石の数珠もあります。水晶、メノー、ヒスイ、サンゴ、オニキスなどがあります。特に水晶は、数珠に使われる代表的な珠で、仏教で言う七宝のひとつに数えられています。
数珠の扱い方は、数珠を左手にかけて右手を添えるように合わせるか、合わせた両手にかけ親指で軽く押さえて、合掌します。
最近では「腕輪念珠」が静かなブームです。数珠は、念珠ともいわれるもっとも身近な仏具ですが、いつも手に持っているわけにはいきません。そこで考え出されたのが腕輪念珠なのです。厄除け(やくよけ)や所願成就(しょがんじょうじゅ)のお守りとして、手首につけます。
どんな素材の数珠や念珠でも使ったあとは、やわらかい布などで軽く拭くだけにして、水洗いや薬品を使うのは避けてください。使わないときは数珠袋や桐箱、紙箱に保管しておきましょう。
「御布施」
御布施とは、自分の持てるものをできるだけ他人に施しをすることで、法施(ほうせ)、無畏施(むいせ)、財施(ざいせ)の3種類があります。法施は仏法を説いて人に施すこと、無畏施は人の心配事や苦労を取り除いてあげること、財施は金銭物品等で施すことで、この財施が現在の御布施になっています。もともとは喜んで仏に差し出すもので、額が決まっているわけではありません。
また、自分の持てるものを最大限つくして施すことですから、御布施がその人の社会的地位とか資産に応じて違いがあるのは当然です。
実際には、どれくらい包むのか、はじめてのことで戸惑ってしまうのではないでしょうか。お寺にくわしい檀家や親戚に聞くか、お寺に直接、相談するとよいでしょう。
下記は、あくまで参考にしてください。
御布施
2万円から50万円のあいだで、自分にふさわしいと考える額で。表書きは、「御布施」とし、「御経料」とか「御礼」とは書きません。
御膳料(法要後の会食に住職が欠席したとき、住職に渡します。ふたりに来てもらった場合はひとりずつに渡します)…ひとり1万円程度
塔婆供養料(法要で卒塔婆を立てる場合に包みます)…寺により卒塔婆料は決まっています。確認を。1本3千円~6千円くらい。
御車代(住職に自宅や墓地まで出向いてもらった場合、送迎の有無にかかわらず、渡します)…5千円・1万円くらい。
「先祖供養」
先祖供養とは、わが命のルーツに感謝する行為です。今日私たちがあるのは、先祖のおかげで、先祖の誰ひとり欠けても現在の自分は存在しません。
先祖供養をすることは、自分をあらしめてくれたすべての人に感謝することなのです。「自分さえよければ何をしてもよい」という現代の風潮は、「ご先祖さまが見ている」「ご先祖さまに申し訳ない」という日本古来の倫理観を失ってしまったせいではないでしょうか。
先祖に感謝供養し親しみを持つことは、家族愛や郷土愛の原流であり、この流れはやがて祖国愛や人類愛といった大河につらなります。
「子は親のうしろ姿を見て育つ」といいます。先祖を十分に供養し、子孫にも先祖供養を伝えて行くことが大切ではないでしょうか。
「塔婆供養」
年忌法要の時、施主や参列者がお墓に卒塔婆(そとうば)を立てることがあります。これを「塔婆供養」と言います。
卒塔婆は梵語(ぼんご)で塔を意味します。弟子がお釈迦さまの遺骨を分骨して、塔を建てて供養したと伝えられ、それがのちに五輪塔になり、5つの刻みを入れた卒塔婆になったとされています。
五輪とは、仏教の宇宙観の五大要素「空風火水地」を示しており、塔婆供養を行うことは、故人が自然界の宇宙と同化し、仏に成ることを意味しています。
故人の追善供養のための白木板の塔婆は、住職にお経をあげていただき、お墓の後ろの塔婆立てに建てます。
塔婆には、故人の戒名や供養の年月日、施主の名前などを書きますので、あらかじめ住職に依頼しておくことが必要です。お礼は「御塔婆料」といって、お寺によって金額が決まっている場合が多いので、直接たずねるといいでしょう。
浄土真宗では塔婆はもちいません。
【6】ご先祖をお迎えするお盆
1.送り火・迎え火
お盆は、正式には盂蘭盆会(うらぼんえ)といいます。故人や先祖の霊が、一年に一度家に帰って来るといわれており、その霊を迎え供養する期間がお盆です。
東京では7月13日から7月16日、その他の地方では8月13日から8月16日に行われ、8月のお盆のことを旧盆とか月遅れのお盆といいます。お盆の前日には、故人や先祖の霊を迎える準備をします。
精霊棚(しょうりょうだな)(盆棚)か仏壇に、精進料理を供えた霊供膳(仏膳)や、季節の物を供えてお盆のしつらえをします。13日の夕方に、家の前で焙烙(ほうろく)という素焼きの皿の上でおがら(麻がらのこと)を焚いて、「迎え火」として故人や先祖の霊を迎えます。
墓参りをしたあと、墓地で盆提灯に明かりを灯し、霊を自宅まで導いて帰ってくるという風習を行う地域もあります。
この時期に、菩提寺の住職が檀家を回ってお経をあげる、棚経(たなぎょう)を行う地域もあります。
浄土真宗では、迎え火で霊をお迎えする慣わしはありませんが、お盆の間は盆提灯を飾って、仏さまと先祖に報恩感謝をささげます
16日には再び火を焚いて「送り火」として送り出します。京都の有名な大文字焼きも送り火のひとつです。
実際に火を焚くのがむずかしい場合は、盆提灯を飾って迎え火、送り火とします。盆提灯はその家に霊が滞在しているしるしとされています。
2.新盆
「にいぼん・しんぼん・はつぼん」などと呼びます。
新盆は四十九日の忌明け後に迎える初めてのお盆のことで、家族が集まり、親戚を招いて手厚く供養します。四十九日を迎える前にお盆が来たときは、翌年が新盆になります。住職にお経をあげてもらう場合も多いです。故人の霊がはじめて帰ってくるお盆なので、霊が迷わないように、お盆の間、軒先や仏間に新盆用の白提灯をつるします。
仏壇の両脇や精霊棚の両脇に絵柄の入った盆提灯を一対、二対と飾ります。飾るスペースがないときは、片側に一つだけ飾る場合もあります。地域によっては、近親者が盆提灯を贈る習慣があります。
新盆用の白提灯は、玄関や縁側の軒先や、仏壇の前に吊るします。白提灯はロウソクの火を灯せるようになっていますが、危ないので火を入れないで、ただお飾りするだけで迎え火とする場合も多いです。
新盆用の白提灯は送り火で燃やしたり、菩提寺で供養処分してもらいます。それができないときは、火袋に少しだけ火を入れて燃やして、形だけお焚き上げにしてから、火を消して新聞紙などにくるんで処分してもいいです。
絵柄の入った盆提灯は毎年飾るものなので、火袋のほこりを払い落とし、部品をよく拭いてから箱に保管しておきます。防虫剤を入れておくと、安心です。
3.精霊棚
盆棚ともいいます。多くの地方では12日か13日の朝に、故人や先祖の霊を迎えるための精霊棚(しょうりょうだな)(盆棚)をつくります。仏壇の前に小机を置き、真菰(まこも)のゴザを敷いて精霊棚をつくります。その上に、位牌を中心に安置し、香炉、花立、燭台を置き、お花、ナスやキュウリ、季節の野菜や果物、精進料理を供えた霊供膳(仏膳)などを供えます。蓮の葉にナスやキュウリをさいの目に刻んで洗い米と一緒に入れた「水の子」、蓮の葉に水をたらした「閼伽水(あかみず)」、みそはぎ、ほおずき、などを供える場合もあります。
故人や先祖の霊の乗り物として、キュウリの馬とナスの牛を供えるのも昔からの慣わしです。霊が馬に乗って一刻も早くこの世に帰り、牛に乗ってゆっくりとあの世に戻っていくようにという願いが込められています。
精霊棚をつくるスペースがないときは、仏壇のなかに供えてもかまいません。
真菰などのお盆用品は、スーパーで求めることが出来ます。
4.お盆の仏教的意味
仏教行事としてのお盆は、仏説盂蘭盆経(ぶっせつうらぼんきょう)に基づくものです。
お釈迦さまの弟子であった目連尊者が、7月15日に多くの僧侶たちに供物を施し供養することによって、餓鬼道に落ちて苦しんでいる母親を救い出すことができたという言い伝えによります。以来7月15日は、故人や先祖に報恩感謝をささげ供養をつむ重要な日になったのです。
お盆に多くのお寺では、餓鬼道や地獄に落ちて苦しんでいる霊を救うための施餓鬼会(せがきえ)と呼ばれる法要を営みます。
5.精霊流し
精霊流しは、お盆の供え物をのせた精霊舟に火を灯して海や川に流す行事で、おもに8月16日に行われます。
また灯籠を流す、灯籠流しをする地域もあり、これらは「精霊送り」と「送り火」を一緒にしたものです。
6.盆踊り
最近では宗教的な色合いは薄れてきましたが、元来盆踊りは、お盆に帰って来た故人や先祖の霊を慰め、無事に送り帰すための宗教的な行事でした。
また、帰って来た霊が供養のおかげで成仏できた喜びを、踊りで表現しているともいわれています。
【7】お彼岸のお墓参り
1.お彼岸にすること
お彼岸は春分の日と秋分の日を中日(ちゅうにち)とし、前後の三日を合わせた七日間をいいます。お彼岸の初日を「彼岸の入り」といい、最終日を「彼岸の明け」といいます。仏教で「彼岸」とは向こう岸に渡るという意味です。迷いのこの世(此岸(しがん))から、川の向こうの悟りの世界に渡るために教えを守り、行いを慎むのが本来の彼岸の意味です。
現在、彼岸の日には家族そろって墓参りをするのが慣習となっています。お墓参りに特別の作法はありません。墓石をきれいに洗い、周りも掃除して花や線香を供えます。手桶から水をすくい、墓石の上からかけて合掌礼拝します。
家庭では仏壇を掃除し、花や季節の果物、ぼたもち、おはぎ等を供え、故人や先祖の供養をします。春のお彼岸には「ぼたもち」、秋のお彼岸には「おはぎ」を仏壇に供えます。「ぼたもち」も「おはぎ」もどちらも米と餡でつくった同じものですが、牡丹と萩という季節の花に由来して名前がつけられたようです。
2.お彼岸と祝日
「国民祝日に関する法律」によりますと、「春分の日」は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」、「秋分の日」は「先祖をうやまい、亡くなった人をしのぶ」と書かれています。まさに仏教の精神そのものであります。
「彼岸の意味」
彼岸という言葉は、古代インド語のパーラミター(波羅蜜多)が語源で、「彼の岸へ至る」という意味です。煩悩や迷いに満ちたこの世を「此岸」というのに対し、悟りの世界・仏の世界を「彼岸」といいます。
悟りの世界に至るために、仏教には六波羅蜜の教えというのがあります。
[布施(ふせ)]他人へ施しをすること
[持戒(じかい)]戒を守り、反省すること
[忍辱(にんにく)]不平不満を言わず耐え忍ぶこと
[精進(しょうじん)]精進努力すること
[禅定(ぜんじょう)]心を安定させること
[智慧(ちえ)]真実を見る智慧を働かせること
本記事は書籍「仏事・仏壇がよくわかる」からの転載です。
著:滝田 雅敏